変わったモノが見たい人におすすめの『茨城の妖怪図鑑』

妖怪、幻獣、UMAの図鑑や事典は山程種類がありますし、さらに増え続けています。クリーチャー厨のみなさんとしては(お金があれば)なるべく全部欲しいんじゃないですかね?

そこであなたがまだ持っていない本に出会える手助けになれるように、図鑑や事典は本来あまり書評向きではないのかもしれませんが当ブログでは軽く紹介していこうと思います。

記念すべき第一回は『茨城の妖怪図鑑』です。


『茨城の妖怪図鑑』のポイントまとめ

茨城の妖怪図鑑

著/中沢建 監修/山口敏太郎

著者:UMAが専門のオカルト研究家

ポイント
・著者自身の研究、仮説が色濃く出ている!
・地域が限定されている分、マイナーな伝承も網羅
・現代の目撃談にも強く過去現在に跨がる「怪しいモノ」を感じられる
・巻末の謎の写真集

筆者独自の研究が生きている ミス・ネスコや台風人間

はじめに著者はUMA専門のオカルト研究家と言いました。しかしUMAの話はオカルトの中ではけっこう地味になりがちな分野です。陰謀論が世界の行く末を語り、心霊主義が死後の世界を語るなか、UMAはあくまで「未確認の生物」なのでわりかし地に足が着いた話になりやすいのです。

もちろん「いるかいないか分からない」といった所はまさにオカルトの醍醐味でありロマンも感じますし、シャドーピーポーやモスマンなど生物というより魔物よりの者達もいますが、他のオカルト話に比べて話を広げづらかったり似たような話になりがちだったりすることもわりとあります。

しかし、中沢建先生のUMA論はかなーり独創的です。

例えば本書でも紹介されている「台風人間」。これは空を飛ぶ巨大な顔のパーツの写真から予測を立てたUMAです。私のようなクリーチャー厨レベルの低い人は単に「空飛ぶ目玉、鼻」と捉えますが、中沢さんはそれを「人間の要素を持った高次生命体、台風人間だ!」と看破しました。

この図鑑ではそうやって中沢さんが「見つけた」妖怪としてネス湖の使節ミス・ネスコが紹介されていたり、古くからの妖怪伝承に近年のUMA事情を絡めてみたりするので、そこが結構な独自色になっていてとても楽しいです。

茨城限定の図鑑なのでマイナーな伝承も

妖怪、幻獣というものは世界中に満ち溢れ、さらに個別の名前がないモノも多いのでその図鑑ともなればかなり多くの掲載候補が省かれたりひとつに纏められたりします。

例えば、河童や雷神(雷)や狐の話なんて日本中にあり、おそらくこれを読んでるあなたの地域にもあったりしますが、特殊なものや代表的なものを除けば全国版妖怪図鑑の場合いちいち伝承ごとに分けたりはしないんですよね。

しかし地域に根付いた図鑑の場合は、そういった話も紹介できます。この本でもなんてことはない河童の目撃談などが紹介されていますし、マイナーな妖怪話も紹介されています。このような「よく聞く妖怪がどこどこにもいました」という話は人と妖怪の距離を縮めてくれて、さらには歴史や自然や不思議を身近なものにもしてくれることうけあいです。

特に地元民、今回の場合は茨城県民にとってはなかなか楽しい体験なのではないでしょうか。日本各地で、いろんなテイストの「わが県の妖怪図鑑」が出てくれればきっと楽しいでしょうねぇ。

現代の目撃談も

中沢先生は不思議なモノ達を調べる人ですので様々な目撃談を集めています。そんな現代の妖怪目撃報告も紹介されています。

著者独自の研究からの妖怪(と言っていいのか正直危うい存在達)、伝承の妖怪、現代の妖怪、こういったモノ達を分けずに紹介することで、「過去、現在を跨ぐ怪しいモノ」というものが感じられる一冊になっています。

巻末には謎の写真集も

中沢先生は「歩く雑誌、歩く待ち合わせ場所」を自称しており、ド派手かつ個性的なファッションに身を包んでいます。また、この本は茨城県の魅力を伝えるための本でもあります。

ともなれば、これは茨城県の名所で自撮りをするしかない!ということなのかは分かりませんが、巻末には(白黒ですが)ちょっとした写真コーナーがありました。インスタ映えならぬ図鑑映えしてます。


以上、『茨城の妖怪図鑑』紹介でした。ちなみに私が個人的に好きなのは「幽霊の干物」の話です。

フワッとよく分からないまま終わるのがよくある「地域のちょっとした妖怪伝承」の現代版、あるいは実話怪談のホラーじゃない版といった雰囲気で良かったです。

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